愛していたのよ、残酷なおまえを。

 

 なんだか毎日はてブロを書いている気がする。どうにかして舞台オセローの話をし続けたいしずっとオセローの話をして生きていけないかなあ

まあ無理な話ですね。たぶんこれがオセローについては最後のはてブロです。たぶん。

 

 

だいすきなエミーリアの話をしたい。

この舞台オセローで1番すきな登場人物になった。まさかこんなにエミーリアのことをすきになるなんて。エミーリアについてのはてブをひらいてしまったよ!

 如何せんこれまでエミーリアは、清く正しく美しいデズデモーナの引き立て役としてモラルの低い低俗な女として描かれてきた。本を読んでもなんだか少し嫌味な女に見える。しかし、舞台の上に立っていたのは真っ直ぐで芯の強いエミーリア。強さと優しさを持ち合わせた女性。

 

「全世界とひきかえなら、ほかの男と寝るか」という問いに、絶対の貞淑を誓うデズデモーナを前にしてエミーリアはこう言ってのける。

「亭主を皇帝にできるなら、誰だって浮気の一つや二つやりますよ。私だったら、煉獄の苦しみにあってもやりますね。」

 

「妻がいるのにほかの女に手を出すって何です?遊び?そうなんでしょう。つい火がついて?そうでしょう。過ちを犯すのは心の弱さ?それもそう。で、女には火がつかないとでも?」

彼女はデズデモーナほど純真無垢ではない。女性性の不条理さを嘆き、腹を立てている。

しかし、 「煉獄の苦しみにあっても」夫のためなら何でもできると。愛する人のために自分を犠牲にできる女性である。

 

実際エミーリアは、拾ったハンカチを用途も知らぬまま夫にあげてしまう。夫が欲しいと言ったから。デズデモーナがあのハンカチをいつだって肌身離さず持ち歩き、キスをしたり話しかけたりするほど大事にしているものだと知っていたのに。「俺がやったハンカチはどこだ」とオセローに詰め寄られてるのを目の前にしても黙っていた。

全ては夫のために。

 

そんな彼女が、夫の悪事は許せなかった。

「ひと働きして全世界を自分のものにしたら、自分の世界の中での罪となるんだから、さっさといいことにしてしまえばいいんです。」

と飄々と言うが、きっと彼女は全世界が自分のものであろうと夫のことを許さなかっただろう。許してしまったら、神に背いた夫は地獄に落ちてしまうから。自らに降りかかる煉獄の苦しみは受け入れられても、愛するひとがそれを被るのは見ていられないのだ。

 

黙ってろ、家に帰ってろと言われても彼女はそうしなかった。喋ったら殺されるなんてこと、誰よりも彼女が分かっていたはずである。きっと最初で最後であろう夫への背き、つまり、「ぺちゃくちゃとうるさいのなんの」「いつだって喋る」と夫に悪態付かれた彼女の最期の『お喋り』は、誠実さと愛そのものに思えた。

 

そして彼女は静かに死を受け入れる。剣を抜いた夫を真っ直ぐに見つめ、逃げることもせず。自分の裏切りで欠けてしまった夫の男性性を、夫のプライドを、守るために。

 

タイトルはエミーリアの台詞です。ムーアに向けた、デズデモーナの想い。そして、重ねられたエミーリアの想い。

愛していたのよ、残酷なお前を。

エミーリアは、最後までイアーゴーを愛していた。

 どうかエミーリアが幸せでありますように。